2022年 私の10冊 その6
⑥ 服部英雄 蒙古襲来絵詞復原
服部氏にはもう一冊蒙古襲来に関する著作があり(『蒙古襲来』)、「神風史観」がどのように形成されたかを解き明かし、同時に蒙古襲来がどのようなものであったか、その当時の武士はどのように戦ったかを詳細に語っています。この際の重要資料が、御家人竹崎季長が描かせた『蒙古襲来絵詞』で(私は中学生のころからこの絵巻物に惹かれていました)、著者はこの絵巻のいくつかのバージョンを比較検討しながら、傷みが激しい原本の復原を行っています。美術作品として、また歴史資料としての『蒙古襲来絵詞』の価値が実感できる本です。歴史としての蒙古襲来に関しては先に出た『蒙古襲来』がお薦めです。
服部氏には『河原ノ者・非人・秀吉』という非常に刺激的なタイトルの著作があり、私はこれを読んで、大阪の方々はご不満かと思いますが、吉川英治の『新書太閤記』で描かれているような目出度い人間としての秀吉像は改められるべきと感じました。
⑦ 読み残し
タイトルに10冊と書いてしまいましたので、読み切ってはいないが、おそらく来年には読み終わり、紹介できるかもしれない本を挙げておきます。
David Graeber The Dawn of Everything(あと1/3残っていますが、必読書)
東慎一郎 『ルネサンスの数学思想』(なんとか読み切りたいが、無理かもしれない)
Pierre Clastres Chronicle of the Guayaki Indians(アナーキーな人類学者の稀有な本)
Sonali Deraniyagala Wave (矢澤準二氏推奨の本、読み始めています)