2021年 私の10冊 その7

⑦ Richard Hofstadter  The Paranoid Style in American Politics and Other Essays


Richard Hofstadter
The Paranoid Style in American Politics
and Other Essays

 政治史家ホフスタッターはトランプ登場によって注目された『アメリカの反知性主義』の著者で、彼の一連の著作はアレクシ・ド・トクヴィルの『アメリカの民主政治』と並び、米国を知るための必携書です。この本では所謂「謀略論」を真正面から取り上げ、米国ユニークな歴史的背景を描いており、なぜ米国で謀略論が盛んなのか、その一端を知ることが出来ます。ホフスタッターがパラノイド・スタイルを発表したのは1964年で、ケネディ大統領暗殺の翌年、米国内での人種差別を禁じる公民権法が成立した年であり、日本では第一回東京オリンピックが開催された年ですが、その内容は今でも示唆に富むものです。実は、陰謀論を論じるより、陰謀論を作り出し、信じるメンタリティを論じるべきであり、陰謀論そのものの多くは仔細に検討する必要もないほど(根も葉もないとまでは言はなくとも)粗雑なもので、陰謀を企てる悪い奴は違いますが、筋書きは大変に似てます。そのメンタリティですが、ホフスタッターは「パラノイド・スタイル」と呼ぶ。パラノイド(Paranoid)とは、偏執症(患者)の、誇大妄想的な、病的なほど疑りぶかい、ことで、これが陰謀論を生み出すメンタリティであるとしています。論じている内容はほぼ米国に限定されています。「パラノイド・スタイル」は米国ユニークなものではなく、インターナショナルな現象ですが、米国の精神的(宗教的)、政治的(建国以来2つの党による対立構造がある)な事情ゆえに特に顕著な事例が多く、いわば典型例として取り上げやすいと言え、特に現代ではその影響力は大きいでしょう。これほどの内容ですが、まとまった翻訳がないので、陰謀論の部分だけ翻訳を試み、一部の人に読んでもらいました。

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