2021年 私の10冊 その9

 大童澄瞳 『映像研には手を出すな』 (小学館)

大童澄瞳 映像研には手を出すな

 9番目はコミックです。これを読むきっかけはNHKで放映されたアニメ版を観たからで、アニメは、イギリスのミュージシャン・エルヴィス・コステロが「ガーディアン」紙上にて「文化的ハイライト」の一つとして紹介、「映画制作のあらゆる要素の教材」と評価したそうです。アニメが原作のコミックと何ら違和感がないのは、コミックの作りがアニメそのものだからで、実に斬新です。ストーリーは、長身で醒めた目をした集金と交渉の才能を持つプロデューサー役、いつもブッシュハットをかぶりうさぎの縫ぐるみを離さずストーリー作りに才能を発揮する脚本家兼監督役、現役アイドルで美少女だが作画の能力がすごいアニメーター役の三人の女子高生がその周囲を激しく巻き込みながら作品を作り上げていくだけのもので、胸キュンはなし、派手なストーリー展開もなしの、ひたすら細部に拘った、ある意味地味なコミックですが、アイデアがどのように生まれてどのように形になっていくかそのプロセスが面白い。あの高級誌New Yorkerが取り上げた理由は十分にあります。ちなみに、アニメ版のタイトルバックも秀逸な出来です。今年6巻目が出ましたが、姪がすべて持って行ってしまった。

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