2021年 私の10冊 その10

 月島冬二 『US-2 救難飛行艇開発物語』 (小学館)

月島冬二
US-2 救難飛行艇開発物語

 日本には、零式艦上戦闘機(ゼロシキではなくレイシキ)の他にも世界水準を超えた航空機があったことをご存じですか。その一つが二式飛行艇です(通称二式大艇)。貧乏国日本が運用した数少ない四発(エンジンが4つある)航空機です。現存する唯一の機体が晴海の船の博物館のヤードに長らく展示されていました。零戦は、余裕のない設計と出力アップに限界があるエンジンのおかげで大戦後半には旧式化しましたが、二式飛行艇は最後まで世界トップの性能を誇りました。その伝統と経験は今でも継承され、海上自衛隊によって運用される救難飛行艇US-2に受け継がれています。US-2がヨットで遭難したキャスターの辛坊治郎を救難したことはかなり有名です。このUS-2は1996年に正式発注され、2007年に配備されましたが、この間の開発と製作の試行錯誤、紆余曲折を丁寧に描いたのがこのコミックです。帯には「超理系コミック」とありますが、その通りで、相当のヒコーキオタクでないとチンプンカンプンな情報に溢れています。プロジェクトXのコミック版です。

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