2024年の読書(1)

 今年もいろいろな本を買いました(読みましたではない)。買いなおしたものもあり、その存在を意識しながら今まであえて読まずにいたものもあるし、書店のバーゲンで安かったので入手したものもある。

レイモンド・チャンドラーのTrouble Is My Business

 買いなおしたのは、レイモンド・チャンドラーのTrouble Is My Businessで、最初は銀座にあったイエナ書店で40年以上前に入手した。当時のペンギンのペーパーバックは驚くほど軽く、薄いものはズボンの尻ポケットに収まったが、その分紙質が悪く、数年で茶色に変色し、ページが剝がれてしまったので処分してしまった。そのペーパーバックとは違い、チャンドラーの作品は長持ちする。何度読んでもいい。味がある。ストーリー自体は破綻が多く、ミステリーとしてプロットがダメなのは致命的だが、私はチャンドラーの作品を小説として読んでいるので楽しめる。チャンドラーの作品は一種の風俗小説で、ファッションの描写も細かく、その分時代性が濃いので、会社で英語のリライトをしていた米国生まれの女性に「こんな言葉もう使わないわよ」と言われたが、キャラクターの会話の一つ一つに滲み出る心情は時代に関係ない。

                                 

懐かしいイエナ書店のブックカバー

 ところで、銀座のイエナ書店が店を閉じたのが2002年だ。イエナだけでなく、その下の階にあった近藤書店、旭屋、福家書店などいくつもの大型の書店が銀座界隈から姿を消した。銀座に昔からある本屋で残っているのは教文館くらいだろうか。この本屋はキリスト教関係の書籍で有名で、熱心なクリスチャンである店主が夜に教文館・聖書館ビル(アントニン・レーモンド設計の名建築、昭和8年の建築には見えないほどモダーンである)の横に台を置いて聖書を売っているという噂は事実だった。教文館以外では、当時から不思議な雰囲気の改造社はまだ健在のようだ。本屋ではないが、昼休みによく行っていた天賞堂の、プラモデルなども売っていた模型売り場は、今は鉄道模型に特化していて昔のようにいろいろ並んでいないのはちょっと残念だ。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

書評

前の記事

Why War?by Richard Overy